Update 27.Aug.2022

HF100Wリニアアンプの製作

KENWOOD TS-680Sから取り出した送信・フィルタ基板を改造して





TS-680Sから取り出した100W送信基板とフィルター基板を一つの筺体に収めてリニアアンプを作った。
当初はそっくり移して少し追加の手を加えれば良いだろうと安易に考えて始めてみたがそれは甘かった。
サービスマニュアルを入手してオリジナルの仕様を 調べたら100Wに対する入力が僅か20mWとある。と言うことは5000倍、つまり電力利得は37dBでとてつもないアンプということだ。とりあえずエキサイター として想定しているアイコムIC-7410(50W機)では最小出力が2Wなのでこのままでは使えない。この基板の回路を見ると10W機のファイナルユニットに更に ファイナルの出力トランジスタを追加した3段ステージの構成になっている。なので初段のプリドライバーと称するアンプ部を除外して2段目を入力としたが まだ過剰と思えるので手持ちの抵抗で出来る減衰量のアッテネーターを作って入れた。
バンド切換の信号と送信部トランジスタのバイアス電源が 無線機本体から供給されていたのがなくなったので別に用意する必要があり、バンド切換はリングカウンタによる押し釦のデジタル式に、バイアス電源は 基板内に不要になった5Vの電源回路があり、その3端子レギュレータを8Vのものに交換することで用意できた。
50MHzは不要なのでその関連パーツは すべて取り外してフィルター部はスルーになるようにして、50MHzとHFの2系統の切換リレーは送信のスタンバイリレーに転用したのでその為に基板の パターンカットやリードインサート孔開け、ジャンパーなどの改造をして使用するコネクターもすべて当局で共通の日圧のものに交換した。
ALCの検波電圧が(+)で出力されていたので一般的な(−)で出力されるように基板内の検波ダイオードの極性を逆にして背面パネルに電圧調整のVRを経て 出してあるが、当面使うことはないと思う。
出力電力メーターは手持ちに電力スケールのものがなくオーディオのVUスケールの普通の電流計で代用して いるが、対数の目盛が逆になるのでワンポイントの0VUを100Wとして較正して一応の目安としてのモニターにはなる。150Wでもスケールアウトはしない。
BANDポジションのパイロットLEDは電灯色を選んだが高輝度型しかなく試しに使ってみたが発光する最小電流にしてもそれでもまだ明る過ぎる。 なんとかしたいところ。
ケースはアルミ押し出し材の上下二分割で堅牢なものだが、その使い方は基板と ヒートシンクが一体の為やむなく上側にすべてを組み付ける構造となった。レイアウトはTS-680と同じなのだがケースの形状・寸法の関係で 前後の配置になってヒートシンクのフィンが横方向になり冷却風の流れも横になってしまったが致し方ない。
送信基板一体のヒートシンクはケース直付け、 フィルター基板とコントロール基板は直付けのサブシャーシにスペーサーを介して取り付ける。
電源投入してまず各部電圧をチェックしてみたが問題なく 正常値だった。アンプ部のトランジスタのベースバイアス電圧はきっちり調整されているみたいで、アナログテスターでは少し低めだがインピーダンスが低い からだろうと思ってインピーダンスの高いデジタルテスターで測定したらマニュアルにある指定電圧にぴたりと合っていた。30年ほど前の設定が変化していない のはすごい。
性能はなかなか良くて150Wは問題なく安定して出力 する。それ以上も徐々に歪みが出てきて200Wでは飽和してしまうが発熱は大きくても壊れることはないと思うので、余裕を持って100Wで使えばALCは 使わなくても良さそうだ。


逆対数スケールのVUメーターはご愛嬌。 高輝度LEDは明る過ぎで眩しい。 STANDBYスイッチは接続の仕方で エキサイターの送信コントロールも出来る。


TS-680の内臓スピーカーがあったスペースはコントロール基板に適所。シロッコファンは静かで良いが この種での採用は珍しいかな。


送信時外部アンテナリレーを動作させるためにDC12V出力のDCジャックを追加した。ついでにRating Plate も貼り付けておいた。



製作


TS-680から取り出したファイナルユニット。


不要、交換、一旦取り外しやパターンカット、ジャンパー、孔開けなどの改造をする。


TS-680から取り出したフィルターユニット。


コネクター交換、追加、50MH関連パーツの取り外し、スルーのジャンパー取り付け。


コントロール基板はBAND切換、スタンバイなどをコントロール。


片面のユニバーサルボードで製作、コネクターが集中する。


電源とスタンバイのパイロットLED基板、BAND切換スイッチ・パイロットLED基板。



パワーメーターのバックライトとレベル調整VRの基板。メーターにスペーサー取り付け。


(左)−14dBπ型ATT          (右)−26dBπ型ATT

基板を外したついでにせっかくだからサーマルコンパウンドを新しく塗り替えた。


アルミ押出材ケース タカチ電機EXシリーズ EX23-8-27SS (W232×H77×D273)


前後パネル以外のケースの加工は放熱孔だけ。ケガキが面倒なので方眼紙のプロットで。


前パネルはサブパネルとの位置合わせで共で加工する。アルマイトは切削性が良い♪


ケースに取り付け穴を開けたくないので各基板の取り付けにサブシャーシを介す。


適当な端材でメーターのエスカッションを作ってみた。切り欠き穴だけより良いと思って。


レタリングで文字入れ、クリアラッカーで抑える。レタリングはもう手に入らない。



サブパネルはLアングルで補強、メーター押え金具とパネル取り付け金具も取り付け。



サブパネルA'ssy 前パネルとぴたり現合。


後方を俯瞰


前方を俯瞰


コントロール基板周辺


メーター、ALC出力周辺


下側ケースのサブパネル保持具。押した時のあおり防止の為。

☆送信基板の回路図はこちら

☆送信基板の基板図はこちら

☆フィルタユニット基板の回路図はこちら

☆フィルタユニット基板の基板図はこちら

☆コントロール基板の回路図はこちら

☆総結線図はこちら

*改造、追加、変更、廃止などで現状とは異なることもあり。

送信時DC12V出力のDCジャックを追加取付、外部アンテナリレーを動作させる。

DC12V出力(電流制限抵抗入り)、コントロール基板CN2"SEND"より取り出し。



アッテネーターのこと

初段のプリドライバーを除去して2段目から入力するようにしたがエキサイターIC-7410の最小出力2W に対してはまだ利得過剰と思えるのでπ型アッテネーターを作って入れたのだが、各ステージの利得が良くわからないので大体の見当で手持ちの抵抗で出来る 減衰量を計算して−14dB(1/25)と決めた。しかしそれでもまだ過入力なので更に−26dB(1/400)のものを作って入れ替えた。結果それで正常に動作させる ことはできたが予定より大きな入力電力、およそ4〜5W程度となってしまった。
IC-7700の最小出力が5Wなので両機で使えることも考えての ことだがもう少し減衰量を下げても良さそうなので中間の−20dB(1/100)程度のものを無誘導抵抗が手に入ったら作って確かめてみようと思う。抵抗の電力 消費も大きいとその分発熱も大きく、実際結構高温になっているので抵抗値を二分割して2個で構成して電力を分散するようにした。その為にも入力電力は 出来るだけ低くしたい。
3エリアのOMさんの、ピックアップコイルによるコイルカップリングはどうかとの話もあり、その方が調整も楽で自由度も ありそうなので一度試してみようかなとも思う。





実は最初の構想段階では早まって こんなのも作っていた。−5dBくらいを考えてのことだがATTスルーのリレー回路まで付けてしまって、いざ具体的な設計を始めて見るとそれどころでは ないとわかって取り付けただけで配線もせずにお役御免となった代物。なにか他のものに流用できないかとも思って一応バラさずにいる。


取り外した50MHzパーツ
そっくりユニバーサルボードに組み付けてモノバンドのパワーアンプにしてみようかなとも思うが、使う機会があるかは 別の話で独善的に作りを楽しむこと。
M57735は50MHzのパワーモジュールで電源電圧12.5V、入力0.2Wで出力20W、最大25Wの出力が得られるので 電源容量は結構大きなものが必要だがハンディ機なんかをエキサイターにしたパワーアンプで移動運用なんか面白いかもしれない。
TS-680ではこのユニットにもプリドライバーアンプが入っていて入力仕様が20mWとなっているので汎用で使うには切替でスルー出来るようにするか 最初から除外した方が使いやすいと思う。
写真中のリレーはフィルター基板での使途変更で必要になったので元の所に戻してある。