Update 25.Jan.2022

50MHz20Wリニアアンプの製作
RF POWER MODULE M57735を放っておくのは惜しい
 
固定局としての50MHzBANDはオールモードの50W機と200W機の2台が あるので移動運用の機会の場合以外はすぐに使うつもりでもなくどうしても必要なものでもないが、部品材料が揃っていて捨てるつもりだったヒートシンクを 眺めてのインスピレーションからイメージが湧いて、今は時間もあるし面白そうなのでおもちゃコレクションの追加にもなるなと思って作ってみることにした。
メインデバイスの仕様のままと言うことで入力0.2Wで出力20W、入出力にBNCコネクター、送受信アンテナ切り替え、スタンドバイスイッチとその リモート端子を装備させてごく普通のパワーアンプに仕上がった。サイズはW57×H51×D130でまあコンパクト、重量492gで見た目より軽いか。
入力にエキサイターとしてIC-7410を臨時の−14dBのアッテネータを介して、出力にSWR・パワーメーターとダミーロードを接続してSSB1KHzの シングルトーンで動作させて出力電力を測定してみた。電源電圧13.6Vでほぼ20Wの出力は確認できた。 入力電力は小さくて読み取りができないがおおむね定格どおりだと思う。電流は大ざっぱで約4A流れる。
発熱は結構あるみたいで、 フルパワーで連続5分ほどでヒートシンクフィンの肌感覚では45〜50°C以下くらいだと思う。
ダミーロードからの送信ではあるが受信してみてスプリアスなども見当たらないし復調信号の波形で歪みはないようなので実用に問題ないと思う。



☆TS-680オリジナルの回路図はこちら       ☆本機の回路図はこちら



基板の製作
KENWOOD TS-680から取り出したフィルター基板内の50MHzのアンプとLPF部のパーツを利用して1面の ユニバーサル基板にまとめて収容して50MHzパワーアンプユニット基板にする。
オリジナルユニットでは50MHzアンプにも入力にプリドライバーアンプがあって、出力20Wに対して定格入力20mWとあるので感度が良過ぎで必要ないので 除外してパワーモジュールにストレートに入力で定格入力200mWとなる。なまじこれもエキサイターの仕様によってはアッテネーターが必要になるかも 知れないが、そうなるとアッテネーターは外付けとしても基板内や本体配線の変更・改造が必要となってやっかいだ。iCOM IC-705みたいなQRP運用の 出来る機種のエキサイターが良いと思う。
基板の高さを出来るだけ低くしたいのでオリジナルのアルミ電解コンデンサに代えてそれより低いタンタル電解コンデンサにしたのだが、それがいきなり 一つがパンクすると言う想定外のトラブルとなって出鼻を挫かれてしまった。他にトランジスタと3端子レギュレータ、リレーの高さは細工しても11ミリに しか低くできず下ケースの深さで対応することになったので余分で無駄なことをしてしまった。

TS-680から取り出したフィルター基板

フィルター基板から取り外した50MHz部の全パーツ。

電源SWオンでタンタル電解Cがいきなりパンクしたのでアルミ電解Cに交換した。

ラグで取り付けスペーサーを介して直接アース。



製作
今回利用したヒートシンクは他のオーディオ・アンプ製作で試し加工に 使ったもので廃棄するつもりでいたが、それでもなにか他に利用できないかと捨てずに持っていたもので、TS-680のフィルター基板から取り外した50MHz用 のパーツを見ていてサイズ的に良さそうと思いついたが、この形のままでは使えないのであえて無理な加工をしてなんとか使える様にした。 取り付けネジ部は下カバー以外すべてタップ加工する必要がある。
フライス盤があればいいのだがあるのは金工用の弓ノコギリとボール盤だけ。なので小径ではあるがエンドミル加工を垂下荷重のボール盤でやるのは やってはいけないことと思いつつボール盤の構造と特性を理解して危険を承知した上で作業をした。ワークを刃で 引っ掛けて飛ばされたりあらぬ所を傷つけてしまったり横荷重が掛かるのでテーパーシャンクのチャック自体が外れて落下したりする。実際過去にそれで 大怪我をしたこともあって注意して構えていてもやってしまう可能性大。なのでこんなことをやらずに済む形のものを考えて企画・設計をするべきと自戒を 込めて思う。
出来るだけコンパクトにするため基板の取り付けは基板内のパーツでリレーとトランジスタに高さがあるので基板取り付けのスペーサーは ハンダ面がヒートシンクに接触しない最小の2.5ミリとして下カバーも基板最高部に2ミリのクリヤランスを作ったことで深めになった。
パワーモジュールは発熱が大きいので取り付けは必ずサーマルコンパウンドを塗布して熱抵抗を下げてやること。
最初の電源オンでいきなり電源部のタンタル電解コンデンサがパチンと音を発してパンクした。逆極性の時の様な感じなのだがマウント時の極性は間違って いない。耐圧は35Vなので十分。タンタル電解コンデンサの形状は表裏がなく表示のプリントミスも考えられるがリードではフォーミングタイプなので 同じ形状で+−が判別ができない。タンタル電解コンデンサではたまにあることらしいので仕方ないから基板を取り外さずにリードを根元から折って除去 してマウント面から最寄りの同じ回路部にベタのハンダ付けでアルミ電解コンデンサに取り替え修理をした。
電源入力部に逆極性接続防止の保護ダイオードを追加したので電源ケーブルにはヒューズ入りを使う方が良い。
他の用途で試し切削の荒れたままで廃棄の予定だった。
余分な出っ張りを切削除去して大体の平面にはした。

パワーモジュールの取り付け面は段差なく滑らかにする。

下カバーはLアングル材を使って5ピースの組み立て。

底を深くした2ミリのすき間を封じる為のアルミ板を共締め。

タカチ電機のケースに付属の高さ1.5ミリのゴム足を使う。

基板取付スペーサーはM3ナットをΦ3.5の貫通孔にして。

LEDは取り付け前に予備配線をしておく。

パワーモジュールの取付はサーマルコンパウンドを塗布。
基板上でタンタル電解Cをアルミ電解Cに取り替えてある。
電源極性誤接続防止のダイオード追加でヒートシンク追加工
今後改造することがあるかも知れないが一応完成。



タンタル電解コンデンサのこと

タンタル電解コンデンサについてコンデンサメーカーに在職していた 友人にその特性などを聞くことができた。
タンタル電解コンデンサの故障というのはショートで最大の欠点なのだそうだ。昔何かの本で読んだ様な気も するのだがすっかり忘れていて良いことだけが頭に残っていたみたいだ。ショート電流でタンタル素子がヒーターになってどんどん加熱して発煙、発火すると いうことで燃えなかったのはラッキーだったのだと。無通電で長期保存してあって最初に通電した時とか電源回路などの低インピーダンスで大きい ラッシュカレントが流れた時などに起きるそうで、使用方法としてはディレーティング(電圧軽減)で定格の1/3〜1/2程度で使うことが望ましいとの こと。その為に電流制限抵抗を入れるとかヒューズ入りの製品も開発されている。
低電圧とか時定数のあるハイインピーダンス回路では 壊れないそうなので電源回路バイパスとかリップルや高い尖頭値電圧がある平滑回路では要注意か使わない方がいいとも思う。