Update '09.9.4
GR80に電気式タコメーターを装備する

ヤマハミニシリーズには機械式タコメーターキットが純正オプションで販売されていたのだが、今となっては入手するのは非常に困難なこと。
それでは電気式でと言うことになるのだが、6V電装のフラマグ点火では適合する市販の汎用タコメーターが見つからない。
手に入るものは12V仕様のものばかりで信号入力方式も何種類かあるが、電源電圧の問題さえ解決されれば何とかなると思い、それらが使える様に工夫をして取付けた結果良好な動作が得られて成功した。
GR80の電気的特性を調べる

イグニションコイル1次からカウントパルス信号を取り出すつもりなのでまずここの波形と電圧を観測してみた。
電圧はピークで200V程あるので極普通のレベルで問題ないが、逆起電力波形と有接点のポイントなのでチャタリングなどのノイズが結構ある。これは誤差や誤動作の原因にもなるので取り除いておいた方がいいと思う。実際このオシロスコープではそのノイズ成分も計測してそれを含めた周波数を表示している。

試しにC,Rを使った積分だけの簡単な波形整形と電圧設定回路を通してみた所、ノイズ成分がほぼ無くなって信号として使えるきれいな単峰波形(上側CH1)が得られることが判った。
カウントパルス信号としてはCDIのピックアップコイルを信号入力とするタイプのタコメーターなら発電機の充電用電源も使えるのではと思ったのだが、電圧、波形は申し分ないのだが周期が2倍の速さなので、2st2気筒用か4st4気筒用のものなら使うことが出来ると言うこと。

問題なのはタコメーター電源としてのその発電機の充電用電源の電圧と波形(下側CH2)なのだ。
アイドリング時(多分1500rpmくらい)の観測なのだがパワーの痩せ細った貧弱なものでピークで7V、実効値では3Vにも満たず、回転を上げた時の電圧変化(上昇)が激しい。
安定化したDC12Vを作ろうとする時に半導体の3端子レギュレーターを使うことを考えるとこの特性は難しい問題になる。特にアイドリング時は最低限の動作電圧も確保出来ない可能性がある。
電源ユニットを試作して実験をしてみる

商用電源用の小型トランスの2次巻線を使ってAC入力の2倍の電圧出力で単純にDC12Vが得られる安定化電源ユニットを作って手持ちのRZのタコメーターを接続して疑似信号を入れてみると正常な指針指示で動作するので、メーター本体の電気的特性を測定してデータを記録しておいた。
実際にGR80に仮配線で接続してエンジンを回した所全回転域でちゃんと動作した。2ストローク2気筒用なので回転数は半分の値しか指示しないが大体合っているので正常の様に思える。

タコメーター

電源仕様が6Vのものはまず無いので最初から12V用のフルスケールが12000rpmでイグニションコイル1次直結のタイプを探してネット通販で購入したが、届いたものは信号入力が専用ピックアップコイル用のタイプらしかったので実際に通電して調べた所、入力は5〜12Vが適正でイグニションコイル1次に直結は出来ないことが判った。
因にこのメーターは直径48Φ型でハーレー専用とあったが4ストローク2気筒なら2ストローク単気筒に流用可として決めたもの。

付属の取付け金具は使わないので取り外す。
イグニションコイル1次に直結する為には入力の波形整形と電圧調整をする必要がある。メーターからのハーネスは50cmと結構長いので途中でカットしてその間に写真の様なユニバーサル基板に回路を組んで、LEDのバックライトの電源回路も一応(使わない)付加しておき全体を熱収縮チューブでカバーして保護をしておいた。
車体からのハーネスとの接続は脱着の容易さを考えてコネクタを使うことにした。

利用する信号の種類とメーターの仕様によって幾通りかの組合わせで選択の幅はあると思う。
実験に使ったRZのタコメーターを使う方法も考えられるのだが、信号電圧をイグニションコイル1次の電圧程に昇圧する必要があるのと、取付け位置が大きさからスピードメーターと置き換えてのセンターとなるので、別にスピードメーターやパイロットランプを手当てすることになる。
その場合は見た目にはレーシーな雰囲気が出てカフェレーサーとして好ましいことになるのだが。

組込み用の電源ユニットを作る

購入したタコメーターを単体で調べてみた所、信号入力レベルの他に実験に使ったRZのものに比べて最低動作電圧が約1V高く、消費電流が約2.5倍であることが判った。
これは貧弱なパワーのGRの発電機にとっては嫌な予感のする悪い条件、実際に接続して試してみると案の定指針がピクリとも動かず、回転を上げて行くと2500rpmあたりから突然動作してその回転数を指示する。これはやはりアイドリングあたりの低回転での発電機出力の実効値電圧の低さ、パワーの無さの為にこんな症状となる。RZのメーターもギリギリの所で動作していたと言うことなのだろう。
ここから正常に動作させる為の対策が始まるのだが、なかなか一筋縄でとは行かず考えられるありとあらゆる方法の回路を考え、トランスも大きさは同じだが電圧構成の異なるものを3種類試し、更に巻線タップの付け替えまでして出力電圧の作り直し、低回転時の低電圧の実効値を上げてパワーを稼ぐ為に1次と2次を絶縁して半波整流からブリッジの両波整流などとして実験と変更改造をくりかえす悪戦苦闘の連続となった。
問題の根本はアイドリングの低回転でも最低動作電圧以上を得ようとすると、高回転になるとその電圧が高くなり過ぎるためにレギュレータの過電圧入力保護が働いて動作が停止してしまうこと。
最後に窮余の策としてアイドリング時の低回転ではトランスの出力電圧が高いタップで、高回転である程度必要以上に電圧が上がったら出力電圧の低いタップに切り替えることを考える。
整流出力(レギュレータ入力)がある電圧まで上昇したらツエナーダイオードで簡単な電圧検出をしてリレーを動作させて自動で切り替える方法を試した所、切り替えのショックなども現れずスムーズに動作させることが出来た。
これらのことを整理してまとめた結果、トランスは別のものでタップに改造を施し、回路は新規に基板を加工して作り直した為にレギュレータのヒートシンクが車体と干渉する様になってしまったので一部カット、リレーも居場所が無いのでトランスにナットをハンダ付けしてビス止めすると言うなんとも不格好なことになってしまった。

電源ユニット取付け・ハーネスの製作・車体配線

動作すると言う一応の目処が付いたので実装に取りかかる。
電源ユニットは企画段階でここにと決めていてそれに合わせて設計したのでほぼ余裕も無くきっちりと収まった。欲言えばカバーが出来るくらいの隙間が有った方が良いくらいで、真剣にカバーのことも念頭にはある。
固定はバッテリーボックスの底に2カ所穴明けしてぶら下がる格好でM4皿ビスで取付けた。
ここは四方がバックボーン、リヤフェンダ、エアクリーナケース、オイルタンクに囲まれて通常では外からは見えないのと比較的汚されにくいように思える。ただ心配と言うか気をつけなくてはいけないのはバッテリーの電解液の漏れかな・・。
電源ユニットからタコメーター、ライトケースまでは安全を考えて不燃チューブを被せてハーネスを作って配線をしたが、タコメーターはコネクタ、電源、信号の接続はギボシ端子を使うので、車体側の既設の配線に必要分のオス、メスの増設も前もってしておいた。

タコメーターの取付け

メーターのステーは1.5tのステンレス板を加工して作った。個人的な好みとアクセルワイヤの干渉を少しでも避けたい為の高さの都合で2枚構造になったが他に意味はない。
スピードメータのブラケットにタップ加工してステンレスのM5トラスビスで固定してある。
タコメーターはもう少し前方に突き出した位置もいいかなと思ったが、たまたま手元に有ったステンレス板の寸法的な都合で決まってしまった。

装備してから現在までに300km程走行しているが、今の所問題なく動作している。ただ、アイドリングが低くなった時に発電電圧(電力)が下がってしまって最低動作電圧の臨界付近での動作が不安定になる。今の所これ以上は回路的にはどうしようもないのでアイドリングを1500rpmの高めにセット(規定は1300rpm)してあるが、感覚的にはこの回転数で普通の様でもあるしカブリがない。

この種のバイクでは6V仕様のメーターが有ればさして支障もなく装備出来ると思うが、現在入手出来る汎用のものは12V仕様がほとんどだと思うので、この場合成功のキーは電源に有ると思う。
本機では発電機出力の交流から供給を受ける様にしたが、バッテリーからの直流をスイッチング電源などで12Vに昇圧する考え方もあった。いずれにしてもGRの電源系は容量が小さくギリギリのバランス状態なので、増設の装備ではいかに負担を少なく出来るかにつきる。通常の走行でバッテリーの充電不足が起きなければ可と判断出来る。