Update 3.Aug.2022


ピュアコンプリメンタリSEPP・OCLパワーアンプの製作

本機は2020年9月から2021年5月にかけての製作なのだが、およそ50年ほど前の構想を 今頃になって蘇らせたもので、意地でも使ってやるの執念で現在の実用にできるようにアレンジしたつもり。最新のオーディオ機器とは一線を画すが旧い デバイス・技術であっても歪みなく普通に良い音が再生されて自分なりに納得できれば良い訳で、ウチの他のオーディオ機器も同じような年代のものが多くて 旨くマッチしているようにも思えるし、それ以上に作るという面白さや楽しみに満足感がある。

1970年頃だったか準コンプリメンタリSEPP・OTLパワーアンプのドライバー基板を譲り受けたのと少し遅れて手にれたヒートシンクを使ってそのパワーアンプ を作ろうと思っていた。その時の構想がヒートシンクの高さのケースでと思ったが当時市販のEI積層コアの電源トランスでは寸法的に大き過ぎでまず無理と 思い諦めて他に集めたパーツと共に仕舞い込んでいた。しかし時を経てたまたまこの基板のことを思い出して手にしてみたが、余りにも古い回路方式なので 時間のあるときに純コンプリメンタリの回路に改造をしておいた。そして更に時が経ち2年前に中国製のリングコア電源トランスが通販で売られているのを 見つけて、これを使って昔からの構想を実現するべく純コンプリメンタリSEPP・OCLパワーアンプを作ってみることにした。この電源トランスがなければ このアンプは形として現れることはなかったということ。
リングコアの電源トランスは何かと評判の中国製なのだが、侮るなかれ性能的にも安定していて 高負荷時の発熱も少なく、異音・異臭もなく中々の品質と思えるので考えを少し改めることにする。
各巻線の電圧の仕様は公表されていても電流の仕様が わからないのは不便・不安ではあるが容量が200Wとあるのでそれを頼りにするしかなく、メインとなる28V×2の巻線のACでの負荷試験で実効値3Aでは15% ほどの電圧変動率だったのでまあまあの特性・性能なのかと思う。
出力のパワートランジスタはたまたま他の使途で在庫であったものだがドライバーに 対して十分に大き過ぎで、将来パワーアップの場合には対応できるがその前にドライバーのトランジスタを少し大きいものにする必要があり、その取り替えは 色々面倒なことになるので壊れなければ多分今のままで使うことになるのだろう。
今やパワーアンプはバイポーラトランジスタだけでなくFETなどの 新しいデバイスが主流ではあるが、ここでは馴染みのあるバイポーラトランジスタで50年以上前の回路・基板であっても自分で使う上では歪みもなくノイズ レベルも低く普通に良い音であればなんの問題もないわけで、作ってその音を聴いてみて予想かそれ以上に普通の良い音で安心した。折を見て周波数特性 なんかも測定してみようかと思う。


フロントパネルは敢えて文字やロゴを入れずシンプルに   W300×H62×D190


背面


存在感のある扁平なリングコアトランス、これによりヒートシンクの高さでという アンプの構成が可能になった



製作


ピュアコンプリメンタリの回路に改造してある パーツの除去、追加、定数変更など


ピンアサイン不変で既存のランドやパターンを使うのでカットやジャンパーが何ヶ所か


長年保管のソケット端子はメッキが劣化しているので予め呼びハンダをしておく


トランジスタ取付スペースが狭いのでフィンを1列ずつ切削して除去してある


コンプリメンタリ・ペア Pc120W Ic12A 出力50Wクラスでも十分使える


サーマルコンパウンドを塗布して絶縁マイカを介して取付


リングコア電源トランス 100V 28V×2 12V×2 12V×1 200W made in China


電源スイッチと取付金具


左側ヒートシンクに電源スイッチを取付、位置精度を確認しておく

基板ソケットと取付L金具


リアパネル取付、ケース上カバー補強・取付のL金具類


ケース上カバーのパンチングプレート裏面に補強・取付L金具を取付


ボリュームコントロールノブ照明LED基板とボックス 反射板のステンレス薄板を貼付け


ボリュームコントロールVRと取付金具 照明LEDボックスもこの金具に取付ける


VRとLED基板、照明ボックスのASS'Yユニット


DC電源ヒューズ、照明LED電源、アンプ回路バイアス電源の基板


スピーカー・プロテクトのディレーリレーとヒューズ(速断)の基板


電源トランス、スピーカー・プロテクト基板はここにはナシ、リアパネルは変更で追加工


フロントパネルとリアパネル 3.0t厚めのアルミ板を加工してシルバーメタリック塗装


部品取付・組立


底面 2.0tアルミ板でネジ頭の出っ張りが嫌でフラットにするため皿ネジを使用


 組立・配線


組立・配線  右側面より


組立・配線  左側面より


配線完了 電源投入して動作確認、続いてアイドル電流や中点電圧などの調整

出力測定は8Ω抵抗負荷で1kHz正弦波入力にて 測定したがセメント抵抗器の許容電力が20Wと小さくて発熱が大きいので15Wまで確認してそれ以上の測定は中止した。パワートランジスタの発熱は体温より 少し高め程度でまだ余裕があり問題ない。
またドライバーのトランジスタも小出力のもので結構発熱があってこの大電力パワートランジスタのドライブ では力不足だと思うのでもう少し大きいものに交換するか現状のままで出力10W程度までで安全に使うようにすればいいと思う。それでも音量としてはウチの スピーカーシステムの効率では余りあるほど十分にある。

☆総結線図はこちら
☆ドライバーアンプ基板の回路図はこちら
☆B電源、LED電源、スピーカー・プロテクト基板の回路図はこちら
☆ドライバーアンプ基板の調整要項はこちら
*改造、追加、変更、廃止などで現状とは異なることもあり。